≪書面添付の意義≫
会計事務所の多くは、毎月、巡回監査し、例えば、接待交際費についてもその妥当性をきちんと吟味する。
さらに、1円のごまかしもないことを経営者が宣言し、会計事務所が徹底した検閲を行い、最終的に所長税理士がその決算書の品質を保証する。
書面添付したお客様で一件でも脱税が発覚すれば、税理士資格は剥奪され、税理士は無職となり、スタッフとその家族が路頭に迷うこととなる。
いわば、退路を完全に断った覚悟、すなわちスタッフとその家族の全人生を賭けて書面添付を行う。
そういうリスクを背負って作成した決算書であれば、金融機関をはじめ取引先も信頼して頂ける。
≪書面添付は国家のため≫
日本の国家財政は逼迫しており、徴税機関である税務署は慢性的な人手不足である。
税務職員は悪質な脱税先への調査に時間をかける必要があり、我が税理士事務所においても、日本国家に貢献したい。
現在、書面添付には二種類ある。
まず、TKCの巡回監査を実施したお客様に対する書面添付。
次に、いわゆる年一回の確定申告にたいする書面添付。
いずれの書面添付も、書類範囲証明書など一定の要件を具備し、1円の利益もごまかしがないとお客様が宣言すれば上記の覚悟をもって会計事務所は書面添付を行う。
将来的には、北陸の徴税機関が非公式に喜んでいただけるものと確信する。
≪書面添付の定義≫
書面添付とは、法律に定められている制度で、企業が税務申告書を税務署へ提出する際に、その内容が正しいことを税理士が確認する書類(税理士が計算し、整理し、又は相談に応じた事項を記載した書面)を添付する制度。
≪税理士法第一条 税理士の使命≫
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務者の適正な実現を図ることを使命とする。
≪税理士法第三十五条 意見の聴取≫
税務官公署の当該職員は、第33条の2第1項又は第2項に規定する書面が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し述べる機会を与えなければならない
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財産コンサルティングの本質
㈱船井財産コンサルタンツの経営理念は「『社会から必要とされる会社』を創り、『お客さまと社員の幸せ』を追求する」とある。
また、ヴィジョンは、「国内最大の個人財産、法人財務コンサルティング会社として成長し、経済、社会の発展に貢献する」。
蓮見社長によれば、資産家は3つの財産(土地・株式・現預金)を有しており、その三者間の適正なポートフォリオを実現していくことがコンサルティングの本質という。
財務コンサルティングは自社株式を軸に業務をしている。
一方、不動産コンサルティング会社は土地売買を軸にしている。
蓮見氏は、両軸を主力として財務のコンシェルジェを目指す。
財産コンサルティングの本質
1.アセットアロケーション(土地・株式・現預金3つの資産配分)
2.時間軸(100年)
3.地域軸(グローバルな視点)
日本の国土の25%が国有地であり、その額は1,000兆円。
この土地が流動化すれば経済も活性化する。
世界を見渡せば、たとえば、シンガポールは、国有財産の売却・活用で債務圧縮している。
民間においても、世界の金融・不動産売買も視野に入れて、グローバルな視点でコンサルティングを行っている会社も多いと聞く。
今後、不動産の売買は、コンサルティングなしでは不可能となるだろう。
会計人の役割とは
㈱日本M&Aセンタ-の経営理念は、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」。
先日、創業者である分林会長から、経営の視点をご教授いただいた。
その一部をご紹介しよう。
1.人口減少
2005年をピークとした人口減少は1年ごとに1%減少する。マーケットの縮小は、売上減少となる。きちんと戦略に織り込むこと。また、後継者選択も難しくなっている。世襲で後継者の適性があるものは約2割。M&Aは最適のツール。
2.経営計画による現状把握
ドラッカーの学習を通じて、経営とは使命感をもって仕事することと喝破。赤字は罪であり、経営者は即刻退場しなければならない。赤字は会社財産の流出であり、スタッフの家族を路頭に迷わせる。会計人は、このような会社に対しては、経営計画を通じて、廃業指導する勇気を持つこと。
○会計人の役割
上場企業のトップは株主から監視されている。一方、未上場企業(オーナー企業)のトップは誰からも監視されない。会計人の役割は、経営の監査を行う。
≪参考≫ドラッカーの視点~企業の目的と使命
企業の目的と使命を定義するとき、出発点はひとつしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることが、企業の使命であり目的である。したがって、「我々の事業は何か」との問いは、企業を外部、すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
なぜ、帳簿が必要なのか?(静岡の坂本TKC会員から学ぶこと)
なぜ、帳簿が必要なのか?(静岡の坂本TKC会員から学ぶこと)
日本は、法治国家であり、商売を営む250万社以上の社長、約200万社の個人事業者すべてに帳簿の作成を義務づけている。
徴税の視点(青色申告)ではなく、帳簿記入の出発点は、商法である。
商法(商業帳簿)
第19条
1.商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
2.商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。
3.商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。
4.裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、商業帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。
≪商法のルーツは破産防止法≫
学生の頃、商法の立法趣旨は、債権者保護とご教授いただいた。
債権者とは企業にお金を貸し付けている金融機関のことであり、彼らを保護するということは、会社を倒産させないことと同義である。
倒産企業の特徴は、帳簿の作成がいい加減であることに着眼したのは、1673年のフランスであった。
当時、現在の日本と同様、大不況であり、企業倒産、自殺、夜逃げが横行していた。
そこで、ルイ14世は、重商主義で有名な大蔵大臣のコルベールに破産防止のための政策立案を求めた。
この商法典の目玉は、すべての商人に決算書作成を義務づけたこと。
1673年の日本は、江戸時代。
例えば、江戸商人にこのルールを遵守させるにはどうしたよいか。
強烈な罰則ペナルティーを用意するしかない。
そこで、この法典は「破産時に決算書を裁判所に提示できなかった者はギロチン刑に処す」という罰則を用意した。
世界史上、初めて死刑担保の「正規の簿記の原則」が確立された法律。
現在、日本でこの法律を施行すると、経営者の首が転がるのではないだろうか。
なぜならば、適時に帳簿を付けなければ処刑されるのだから。
日々、帳簿を作成している会社と、年に2回ほどまとめて記帳している会社の証拠性、どちらが高いか判然としている。
仮に破産した時に、帳簿をきちんとつけていれば、なんとか処刑は免れる。
日本の金融機関も、担保主義という時代錯誤から脱却し、決算書担保の本質を知って頂きたい。
≪1673年フランス・ルイ14世商事王令≫
第 11 章「破産及び破産犯罪」
第 11 条 卸売並びに小売を行う大商人、普通商人及び銀行業者は、破産時に、本王令において命令したごとき署名、略署を受けた記録及び日記帳を提示しないときは、詐欺破産者とみなされうる。
第 12 条
詐欺破産者は、特別訴訟手続によって訴追され、死刑に処せられる。
≪明治23年日本商法の基礎となった1861 年一般ドイツ商法典制定の草案≫
① 1838 ∼ 1839 年ヴュルテンベルク王国の商法典草案:理由書
商業帳簿は文書の側面があり、他の人々に対する証拠資料として用いられ得る。他の側面は、商人にその業務の状況に関する一目瞭然性を提供する補助資料であることである。フランス商法の理由書が述べるように、その正規の簿記は几帳面さとまともさを証言し、かつ、運命の神の変動に対する防御に役立つ。無秩序な簿記は破産者の特徴である。それが商業帳簿の重要性とその正規な記帳の必然性の理由である
②1849 年4月のドイツ帝国司法省の一般商法典草案」:理由書≫
正規の商業帳簿の備え付けは、一般的な商慣習並びにすべての商法典によって定められている。その備え付けによって、商人は、正規にその業務を進め、忘却あるいは思い違いによって、自らが損害を被ったり他人に損害を与えず、その個々の事業の成り行きと結果を見通し、かつ、合法性と賢明性という規範に従って従来のやり方を継続すべきか否か、あるいは会社経営に変更を加える必要があるか否か、収支を均衡させる必要があるか否か、さらには業務を中止する必要があるか否かを判断することができるように、規則的に繰り返しやってくる特定の時点で少なくとも一度はその業務のすべての状況を観察するようになる。
商取引において不可欠な信用を置く場合、並びに不注意による倒産あるいは偽装倒産によって信用を悪用する可能性がある場合、単に個々の商人の利益ではなく、世間一般の利益のために正規の商業帳簿の備え付けが必要となる。
二つ目の必要性を提示すれば、商事事件の係争時に、正規に備え付けられた商業帳簿への記帳が事情によっては非常に重要な証拠要素と見なされるという、事物の本性にある
誰のために会計が必要なのか?(静岡の坂本TKC会員から学ぶこと)
税理士試験で財務諸表論を初めて学んだ時、財務会計は、利害関係者のために適正な期間損益計算を行うことを目的としているとご教授いただいた。
事実、アメリカの財務会計は、投資家と債権者などの意志決定のためにあるとしている。
では、利害関係者のない個人事業主に会計は必要ではないのか。
否。
経営者自身に報告することが会計の本質である。
TKC前武田会長もアメリカの会計制度は投資家至上主義であり、中小企業の属性を顧慮していないと喝破している。
ルイ14世商事王令の策定関わったサヴァリーの言葉
「資産、負債について作成する財産目録によって、自己の営業状況が芳しくない事を知るに至った人たちは、そのような状況を知らない場合に比して、はるかに容易に対応策をとりうることもまた本当である。
会社を結成していないから、いかなる財産目録も作成するには及ばないという人たちがいたなら、馬鹿げてはいないだろうか、・・・整理、調整するために、自分自身に説明し報告することが義務づけられていないだろうか。
このようなことを無視して生きていくことは、全く思慮を欠くことだといえないだろうか」
ドイツの高名な会計学者レフソン
「法が外部報告義務のない個人商人に対して年度決算書の作成義務を課しているのは、法が破産に対する商人自身の保護と債権者の保護を指向して自己報告を明らかに望んだことの証拠であり、このことフランス商事王令コンメンタール『完全な商人』において指摘されている」と指摘している。
経済産業省「経営計画策定支援」の基本概念
①記帳の目的が「自己報告」であることを経営者に意識づけること
②「自己報告」が経営計画のもととなることを経営者に意識づけること
③経営計画を策定し、事業を拡大するためには、信頼性ある決算書が必要であることを経営者に意識づけること
(経済産業省HPより 「経営計画策定支援」)
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji2005_01_5.pdf
参考文献
「会計で会社を強くする」坂本孝司 TKC出版 2008年8月
STLOWS韓国視察研修
(視察の趣旨)
韓国は経済成長が著しく、金融危機後においてもアジアの中では景気回復が最も早いといわれている。
韓国の人口は日本の約半分、6,400万人である。
そして、世界で最も人口密度が高い国でもある。
今回、STLOWS会員であるN社長のご配慮で、商品の仕入れ先である韓国を訪問させていただいた。
(行程)の一部を紹介しよう。
(板門店見学)
朝鮮の境界線で、38度線の緊張感を味わう。
北が韓国侵略のため、掘った第三トンネルに入ってみる。
かなり深いそのトンネルは、38度線を越え、韓国に侵入している。
トンネルを降り、そして昇りながら、これも我々と同じ人間が作ったものと考えると、人間が集う組織の理念、目的の重要性に気付く。
食物を食べて生きる同じ人間が、敵国に侵入するべく、トンネルを掘る。
一方、社会に役立つために掘るトンネルもある。
歴史の中で分断された朝鮮。
人間の愚かさ、悲哀を感じるとともに、平和を祈る意思を至る所に感じた。
余談ながら、天井の低いトンネルの中を屈みこみながら300メートル以上歩くこととなり、閉所恐怖症でなくとも圧迫感を感じた。
ヘルメットを着用が義務つけられていたわけだが、道中何回も頭をぶつけてしまう(笑)
(第三トンネルの前で)
(会社視察)
N氏は社長就任してから、国内市場からの仕入れでは競争できないと判断し、知人のご縁から韓国商社から仕入れることを決断。
ウォン安という為替の追い風も受けて、会社業績は社長就任後から伸び続けている。
消費者が女性のため、常にマーケティングを行う必要がある。
一番売上のある小売店に120点ほどのアイテムを提供し、売れ筋をチェック。
それを全国で販売する。
首都圏もあれば地方もある。
渋谷で売れたものが秋田で売れるとは限らない。
したがって、ユニクロのようなスタンダードなものを安く供給することを戦略としている。
最終消費者が何を欲しているか、常にマーケティングする。
そのアイテムを韓国商社と相談しながら、中国の工場で大量生産する。
きまぐれな消費者のニーズを常に把握しなければならない現場に同席し、ビジネスのリスクとともに限りないロマンを感じる。
(最後に)
日本の人口は減り、確実に需要は減る。
世界にマーケットを求めなければ、増収増益プランも描きにくい。
世界の中の日本。
急成長する韓国訪問、そして実際に韓国で商取引するSTLOWS会員N氏との出会いにより、「アジアの中の日本」を実体験させていただいた。
ありがとうございます。
国際会計基準は黒船か?
今朝の新聞各社が政権交代を伝えている。
此処石川県では、なんとか元森首相が小選挙区で勝った。
わたくしは、政治と宗教の話は極力しないこととしているので、事実のみを述べるにとどめておこう。
さて、日経ビジネス8月31日号「国際会計基準強制適用~売上半減、利益急増の驚愕」が面白い。
![]()
「企業を測るモノサシを世界中で1つにする、国際会計基準(IFRS)が2015年にも日本で強制適用になる。
日本の会計基準も動き出し、変化は既に始まっている。
当面の対象は、上場企業の連結決算だが、取引相手となる中堅・中小企業にも影響は及ぶ。
モノサシの変化とともに大企業の企業行動が変わるからだ。
IFRSは日本の企業をどこまで変えるのか。」
会計ルールが企業行動に影響を与える。
何度も取り上げている「購入かリースか」、「商品券の引当金処理」など、中小企業においても影響があるものばかりだ。
マイナーな論点で恐縮であるが、新株予約権付社債を発行する際、新株予約権と社債を区分するか一括して会計処理するかは会社の任意であり、これまた選択により財務諸表が異なってくる。
この国際会計基準、今後も注視していきたい。
グループ経営に対する法人税制について見直し
政府が、グループ経営に対する法人税制について見直し検討に入った。
例えば、連結納税を採用していない企業において、グループ内での資産譲渡は課税しないとある。
言い換えれば、グループ間会社においては、含み損を抱える資産の損出しもできないこととなる。
今までの税務コンサルティングの根幹に影響を及ぼしそうな気配。
注視していきたい。。。
子会社からの配当非課税、法人税制、政府検討、グループ経営、円滑に。 (2009/08/16,日本経済新聞 朝刊, 1頁)
政府は企業グループに対する法人税制について見直しに入った。親会社がグループ内の100%子会社から受け取った配当を課税所得に算入しない仕組みを導入。グループ経営が広がるなか、グループ内の資金移動の妨げになる税制を見直し、グループの余剰資金を設備投資などに振り向けやすくすることで企業活動の活性化を促す。同時に、大企業の100%子会社について中小企業向けの軽減税率の対象から外す措置も検討する。
(後略)
大手銀行の不良債権と税効果会計
大手銀行は、税効果会計制度で救済されたことは会計業界では夙に有名だ。
2000年頃、メガバンクは税効果会計を先駆けで導入した。
現状も増加し続けているが、銀行は多額の不良債権を抱えている。
金融庁の指導により、貸し出しの相手先が破綻する可能性が高くなると、貸出額の80%ほどを引当する必要が生ずる。
しかし、税務当局は、この引当金をすぐに税務上の損金とは認めず、実際にこの貸出先が破綻した際に損金として認める。
つまり、財務会計上は費用となるが、税務上は損金として計上されない「有税償却」が多い。
例えば、100億円貸している取引先が破綻懸念に陥り、金融庁のガイドラインに従って、80億円の引当金を計上することとなる。
法人税率が40%と仮定すると、仮にこの80億円が全額損金計上されると、32億円の法人税が節税できる。
しかし、税務当局はその破綻先が実際に破綻するまで、80億円を損金としては認めない。
そこで、適正な期間損益計算のため、32億円分の法人税等調整額を計上して、利益を上乗せし、税引後の当期利益を計上する。
さらに同額の繰延税金資産が貸借対照表上の資産の部に計上される。
(借方)繰延税金資産 32億円(貸方)法人税等調整額 32億円
将来戻ってくる予定の税額を利益の上乗せとして先取りして、資本増加させている。
この繰延税金資産は、将来の税金が安くなる、もしくは戻ってくる権利だから、将来32億円という現金が入っていくくる可能性がある。
その将来の可能性を見越して純資産の部(株主資本)を32億円増加させている。
結果として、銀行の自己資本比率を上昇させている、。
言い換えれば、税効果会計は、銀行の自己資本比率の上昇を助け、「銀行救済会計」と呼称される所以となった。。。
ここらへんから、税効果会計により増加した分を自己資本に組み込むのは如何なものかと議論が白熱しているのだ。
【参考文献】
会計と財務の本質 (実践!知の挑戦者に贈る究極のバイブルシリーズ―アカウンティング・ファイナンス編)
- 作者: 小宮 一慶
- 出版社/メーカー: ビジネス社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
3メガ、自己資本比率上昇、6月末、厳格基準達成にメド。
(2009/08/15,日本経済新聞 朝刊, 4頁)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGは14日、2009年6月末の連結自己資本比率を公表した。
3メガバンクそろって11~13%程度と、自己資本比率規制の最低ラインである8%を上回った。
一方、国際的に関心が高まりつつある自己資本比率のより厳格な基準も、市場が重視する4%の達成にめどがついた。
(後略)
減価償却制度の変更に伴う企業業績の影響度
数年前、職業会計人の質問ベスト5に「購入かリースか?」の選択肢が必ずあった。
減価償却制度が変更される以前は、税法は耐用年数を超えた場合でも購入価格の95%までしか税務上の費用として認めていなかった。
購入した場合と比して、リースならば、100%全額損金算入できる。
そこで、職業会計人は、リースのメリットの1つと説明していたものだった。
その昔、鉄屑が取得価格の5%程であったことから、残存価額をその分残したと言われる。
当時、減価償却制度が変更され、企業の業績に影響を与えたのだった。
減価償却(ことば)
(2007/03/29,日本経済新聞 朝刊, 15頁)
固定資産は長期間利用するため取得時の費用は一括計上せず、使用する期間に応じて何年かにわたり配分する。通常は法人税法が決めている法定耐用年数を用いることが多く、取得額をその年数に応じて定率や定額の方法で償却する。
税法は耐用年数を超えた場合でも取得価格の九五%までしか税務上の費用として認めていない。九五%を超えて償却しても税務上は費用にならず、課税所得は減らない。
〇七年度の税制改正で減価償却が備忘価額(一円)まで認められるようになる。すでに九五%に達している資産についても残りの五%を償却すれば費用になる。企業としては税金面でのメリットを受けられる一方、会計上の利益は目減りすることになる。
減価償却、利益圧迫要因に―制度変更、製紙や石油、影響大。
(2007/03/29,日本経済新聞 朝刊, 15頁)
二〇〇七年度の税制改正での減価償却制度の見直しが、〇八年三月期以降の企業業績を圧迫しそうだ。既存設備を含め全額損金算入が認められるためで、製紙や石油など古い大型設備が多い企業ほど影響が大きくなる傾向がある。償却費増が利益を押し下げるが、貸借対照表の圧縮や現金収支の改善につながるため、実質的に企業価値を押し上げる効果も期待出来る。
企業は取得した固定資産を、税法上損金算入できる九五%までしか償却していないことが多い。償却期間の終わった設備を多く抱える業界では残り五%を償却する際の費用負担が大きくなる。
紙生産設備を抱える製紙業界では王子製紙の残存価額がおよそ四百五十億円。〇八年三月期から五年で均等償却すると、年九十億円の営業減益要因となる。〇七年三月期の営業利益予想の一割強に相当する額だ。
石油精製設備を全国に七カ所に抱える新日本石油は〇八年三月期から五年間に渡って百二十億円程度、利益を圧迫しそうだ。東京電力も発電設備などの残存価額が大きく、毎年四百億―五百億円(単独ベース)の減価償却費増につながる見通し。大型プラントを持つ化学や鉄鋼メーカーなどは一時的に償却費用が増加する可能性が大きい。
減価償却費は現金支出を伴う費用ではない。一方で償却費の増加により税負担は減る。キャッシュフローにはプラスに働くため設備投資の増額なども可能になる。野村証券の野村嘉浩投資調査部次長は「基本的には企業価値には良い影響を与える」とした上で、「見かけの利益の減少を嫌気する投資家も少なからずいる」と指摘する。
今回の制度改正では企業が費用計上する時期や区分のばらつきもでている。日本公認会計士協会は今月、監査上の取り扱いとして「原則、減価償却費として五年間で均等償却」する公開草案を出した。現状ではこれに沿った方針を取る企業が多いとみられる。
もっとも三菱ガス化学は〇七年三月期に残存分の九十億円を一括で特別損失に計上する方針。大王製紙も「特殊要因で本業のもうけを示す営業利益が減るのはおかしい」と〇八年三月期からの五年間で特別損失で処理することを検討している。
さらに三井化学や花王など以前から有税で全額償却している企業もある。その場合は利益への影響はなく、税負担だけが減少する。


