2022/05/05
「最高裁の相続税課税判決」<540>
4月24日の日本経済新聞「社説」を引用して考える。
高額なマンションを借金して買ったうえで、実勢価格より低い路線価で税務申告し、納める相続税を大幅に減らす。
このような節税策が認められるかどうかが争われた訴訟で、4月19日に最高裁が「税負担の公平に反する場合は節税対策は認められない」とする判決を出した。
相続に広く影響する判決として関心が集まり、裁判所が節税の範囲と公平性のバランスをどうとるかが焦点だった。
相続税の算定には通常、国税庁が公表する路線価が使われる。
ただ公表は年に一度だけで、実勢価格が一気に上がる場合などは実態から大きく乖離しやすい。
問題となった不動産も、購入価格が約13億円だったのに対し、路線価に基づく評価は約3億円だった。
借入も加味した申告納税額は「0円」。
国税側はこれが過度な節税に当たるとみて、資産価値を国税が独自に再鑑定できる例外規定を使って追徴課税した。
最高裁は、今回の事例は相続財産の価値を圧縮しすぎており、見過ごせない不公平だと判断した。
注目したいのは、勝訴した国税側にも、特定の人を狙い撃ちして例外規定を使うのは「合理的理由がない限り平等原則に反する」とした点だ。
納税者と国税の双方にくぎを刺したといえる。
この例外規定は適用基準が曖昧との批判が根強かった。
路線価が実態とずれている点も混乱の原因だ。
路線価以外の新たな物差しを考える必要もあろう。
公平で明快な課税は国の根幹である。
最高裁の指摘を踏まえ、国税当局は、納税者にとって透明性の高い相続課税の仕組みづくりを進めるべきだ。
「伝家の宝刀」とも呼ばれる「財産評価基本通達6項」が裁判ではその是非が問われた。
しかし、その公平性を担保する明確な規定づくりが難しいのが現実だ。
写真・・・囲碁フェスタで羽根彩夏プロ初段より指導いただく。(5/1)
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