1.円滑化法の現在
2009年12月、「中小企業金融円滑化法」が施行されています。
正確にいえば、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」。
当初、臨時という名前のとおり、時限立法とされ、今年の3月末までとあったが、期限が延長され、来年2012年の3月末までとなります。
2010年12月時点で、貸し付け条件の変更等の申し込みは100万件を超えています。
2.時代の変遷
1970年、私が生まれた年。1990年までの20年はインフレ、経済は右上がりであった。金融機関は、お金を貸し出す際、不動産・株式という必ず値上がりする担保さえ頂ければ、融資ができた時代でした。
1990年から20年は、デフレ、経済は右下がり、さらには不良債権が続出して、金融機関受難の時代となりました。
1999年、不良債権を処理するため、リストラとくに人的リストラも最高潮に達した時、融資の際の審査体制を根本的に変えます。
これまで支店長が融資の最終決断をしてきました。支店長はお金を司る神のような存在であり、当時、お金を借りている経営者は、支店長に盆暮れのお届けものをしたという。支店長は、経営者の人格、企業の社会貢献性を勘案し、融資を実行してきました。
ところが、この年を境に、融資の審査は、支店長から本部に委譲し、「格付け」というシステムで判断することとなったのです。ただ、現在、支店長枠として、たとえば1億円くらいの決裁権限は残されているようです。
1999年、金融機関のバイブルとなる金融検査マニュアルが登場しました。
このバイブルにより、正常先、要注意先、要管理債権先、破たん懸念先、実質破たん先というように、区分を設け、さらに、その区分ごとに貸倒引当金を積みます。
しかしながら、この格付けシステムは、定量的な数値しか見えまぜん。
中小企業には目に見えない技術力・営業力があります。
そこで、2008年、金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)をまとめ、中小企業の定性分析を行い、潜在能力の顕在化をはかりました。
このような流れの中、円滑化法が登場したのです。
(続く)
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相続税アップと小噺
2月に突入して、税制改正セミナーの講師をいくつか務めてまいりました。
相続税の大幅増税と贈与税の小幅減税についてお話をしております。
レガシィ(旧FPステーション)は、税制改正の学習教材の一つですが、その中でこういう小噺をご教授いただきました。
その1
「税制改正」とかけまして。。。
ヒットが欲しい映画界の秘訣とときます。
その心は。。。
どちらも、対策(大作)が必要です。
コメント
2011年は、資産税対策元年。
何らかの対策が必要ですね。
その2
「相続税の税率アップ」とかけまして。。。
雨上がりの空とときます。
その心は。。。
どちらも虹(二次)に注目です。
コメント
配偶者の二次相続の相続税にも留意が必要です。
継続学習と禅の修行
岩崎夏海著「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が大ベストラーとなり、お茶の間にもドラッカーの名が浸透してきました。
今回、ドラッカーの「未来企業~生き残る組織の条件」を紹介します。
13章の「生産性の新たな課題」131~132ページを一部抜粋。
「まず第一に、生産性の向上には、継続学習が必要であるということである。・・・
そこから学習がはじまる。しかもその学習には、終わりというものがないのである。
まさしく、日本人がわれわれに教えているように
(これは、日本の昔からの伝統的な禅の修行からくるものだ)
訓練の最大の成果は、単に新しいことを学びとることにあるのではない。
すでにうまく行っていることを、さらにうまく行うことにある。」
「第二に、同じく重要な訓練として、ここ数年の観察で明らかになったことであるが、知識労働者やサービス労働者は、自らが教えるときに、最もよく学ぶという事実がある。
花形セールスマンの生産性をさらに向上させる最善の道は、セールスマン大会の場で「成功の秘訣」を語らせることである・・・
情報化時代にあっては、いかなる企業も、学ぶ組織にならなければならないと言われる。
しかし、それと同時に、教える組織にもならなければならないのである。」
ドラッカー氏は、事業発展には、継続学習と教える組織が必要と説いております。
蛇足ながら、ある新聞記者の方に、「木村さんのブログは引用が多い」と指摘されました。
その通り。
ただ、引用したものを事業に活かしているいや活かそうとは努力しております。
弊社では、毎年9月初旬に、組織の継続学習の集大成として、提案力コンテストを実施し、プロフェッショナルスタッフ全員が発表し、全員で聴き、優秀者を表彰しております。
全員の経験や知識を共有するべく、教えていただく機会を全員に設けております。
継続学習が一つの弊社の特徴かと改めて思います。
自分の命の使い方
星野富弘さんの詩を紹介させていただきます。
「命が
いちばんだと思っていたころ
生きるのが苦しかった
いのちより
大切なものが
あると知った日
生きているのが
嬉しかった」
(星野富弘作・おだまき(いのち)/書籍『鈴の鳴る道』/絵はがき集 第2集 収録)
この詩を初めて聞いた時、不覚にも泣いてしまったわけです。
苦しい時は、矮小な自己保身のため、もがいている場合が多いと自分自身思い当ったからです。
自分の命は、周囲の皆様に自分のできることを与えて「ありがとう」と言っていただくことに使おうと改めて思いました。
二宮尊徳の「たらいの水」を御存じでしょうか。
「たらいの水」
「欲を起こして水を自分の方にかきよせると、向こうに逃げる。
人のためにと向こうに押しやれば、わが方にかえる。
人の幸せも、物質も、お金も みんな同じである。」
二宮尊徳の報徳思想(ほうとくしそう)は、経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されると説いております。
「他が生かされる道は、我が生きる道なり」
会社の目的は、ここにあり、その目的を実現するために目標があります。
前回でも触れましたように、目的と目標を混同してはいけいないと自戒しております。
目的と目標の混同が起きるとき、会社の業績は下降する
ナポレオンは、戦略と戦術につき、かの有名な言葉を残しています。
「戦術・戦闘のミスは戦略でカバーできるが、戦略のミスは戦術・戦闘ではカバーできない。」
この言葉を大胆に置き換えるならば、目的と目標を混同してはいけないということと考えます。
目的とは『的』であり、『戦略』になり、目標とは『的』に導くための『標』であり、『戦術』になります。
2010年度ポーター賞の講演の中で、マイケル・E・ポーター氏は、会社の戦略、目的につきこう語っています。
ポーター教授の言葉を自社の戦略で参考にして頂きたいと思います。
以下、引用。
「これまで、企業は経済的成果を追及するあまり、社会的な役割を見落としてきた。
その結果、ビジネスは以前に比べ社会で尊敬されなくなってしまっている。
ビジネスとは本来、社会的ニーズの充足と経済的価値の創出を両立するものでなければならない。
これからの企業は、企業の社会的責任(CSR)よりも、価値の共有を創造するという意味のCSV(Creating Shared Value)に重点を置くべきだと考える。」
目的=目標+意義
目標とは、目指すべき方向や状態をいいます。
目的とは、目標に意義や大義を付け加えたものです。
有名なビジネス訓話「三人のレンガ積み」の話は、目的と目標の混同につき、大いなる例示となります。
中世の建築現場で三人の男がレンガを積んでいました。
そこを通りかかった人が、男たちに「何をしているのか?」とたずねた。
一人目の男は目的を持っていないため、「レンガを積んでいる」と答えた。
二人目の男は生活費を稼ぐのが目的であるため、「食うために働いている」と言った。
三番目の男は、歴史の1ページに自分の名前が刻まれることに喜びを感じ、世の役に立つことが目的となっているため、明るく顔を上げてこう答えた。
「後世に残る町の大聖堂を造っている!」
三人の男たちにとって「目標」は共通である一方、「目的」は三人ともばらばらです。
個人ではなく、会社という組織で何のために何を実現したいのか。
より社会的な使命や目的を実現するために、数値目標を掲げて全員で仕事をするとき、会社の業績は長期的に発展していくものと信じています。
なぜ、会社の規模が大きくなると、利益率が下がるのか?
「会社の規模が大きくなると、その大きさに比例して固定費が増加します。収益の向上がない限り、利益率が下がっていきます。」
最近、この当たり前のようなことを実感しています。その真因は何かと考えていた時、ドラッカーの言葉とパーキンソンの法則に出会いました。
今後、このテーマを深堀していこうと思います。
1.ドラッカーの言葉
「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない」(ドラッカー名著集『創造する経営者』)
「・・・組織のなかには、コストセンターしか存在しない。唯一のプロフィットセンターは、小切手を渡してくれる顧客である。」(未来への決断―大転換期のサバイバル・マニュアル)
企業の目的はお客様を創造することであり、マーケティングと革新だけが成果を生む。その他の職能は、すべて費用であることを今一度、肝に銘じたいです。
2.パーキンソンの法則
「仕事量は与えられた時間を使い切るまで膨張する」(第一法則)
(Work expands so as to fill the time available for its completion.)
「支出は収入の額と一致するまで増大する」(第二法則)
「拡大は複雑を意味し,複雑は腐敗を意味する」(第三法則)
パーキンソンの法則は、切羽詰るまで頑張らないという悲しい人間の習性も説明できます。
ゴールドラットの「クリティカルチェイン」によれば、ほとんどのプロジェクトは期限の10分の1の時間で完了するはずなのに遅れてしまうことを指摘しています。
パーキンソンのかの有名な第一法則「仕事量は与えられた時間を使い切るまで膨張する」は、現在でも生きております。
では、この運命を甘受するか。
「未来の先読み」を習慣化する。
先手で、運命を打開していきたいと思います。
新年のご挨拶~日々の決断の基準
新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い申し上げます。
新春の冒頭にあたり、日々の決断の基準について書かせていただきます。
1.人生の結果を左右するポイント
≪成功の方程式≫
人生の仕事の結果=考え方× 熱意× 能力(稲盛和夫氏)
能力や熱意があっても、考え方が間違っているために、十分な成果が出ない場 合があります。
考え方がマイナスだと掛け算なので全てがマイナスになってしまうからです。
人生の仕事の結果=考え方× 熱意× 能力× 出会い × 決断
この有名な成功の方程式にフォーバル創業者の大久保氏秀夫氏は、「出会い× 決断」を加えています。
出会いには、「類は友を呼ぶ」という法則があり、自分自身を磨けば、良い出会いがあります。
さらに、決断は「肉体」「心」「魂」の3つに分類できます。
①肉体の決断
本能による決断です。「疲れたからさぼろう」というようなことです。
② 心の決断
損得による決断です。「もうかるかどうか」とか「好きか、嫌いか」という基準で行う判 断です。
③ 魂の決断
善悪による決断です。お金と名声ではなく、自分の存在価値は何かという基準で判断しま す。
2.魂の決断
魂の決断とは、本来、人として判断せねばならない領域です。
あるガンの専門医は、何人もの患者に余命3か月と宣告してきました。そのガン患者の反応には2通りあるといいます。
●「自分の人生は何だったのか?」と後悔する
● 「充実した人生をありがとう!」と感謝する
仮に余命3か月(四半期)と宣告されたとき、残された時間を考えれば、名誉やお金は必要ありません。
最期に、社員、提携先、お客様、家族から「ありがとう」と言って頂けることが最も 大事なことと考えます。
人間の価値、存在感は、「ありがとう」と言って頂く数だと思います。
今からの発想ではなく、終着点からの発想で考えるならば、① 出世⇒存在感②お金⇒ 使命感③自由な時間⇒大切な人との時間となります。
魂のレベルで、事業実施の決断に至るまでの優先順位を考えるならば、経済性ではなく、社会性を重視します。
1 社会性(儲けよりも社会価値があるか?)
2 独自性(誰もやっていないか?)
3 経済性(採算が合うか?)
今回の決断の基準が事業主の皆さまに何らかの参考になれば幸いでございます。
末筆ながら、皆様の事業の益々のご隆盛を祈念してご挨拶とさせていただきます。
北國がん基金への寄付
昨年同様、25日(土)、北國新聞社を訪問し、北國がん基金へ寄付させていただきました。
金100,000円。
北國がん基金
http://www.hokkoku.co.jp/kikin/gan/
なお、26日(日)北國新聞の朝刊で紹介いただきました。
記事によれば、「木村社長は『地域の医療福祉の発展に役立ててほしい」と話した』とあります。
利益の社会配分として寄付することは、当社の事業発展計画書に事細かく決めております。
第37期事業発展計画書 財務に関する方針 一部抜粋
1.利益を出すことにより
①内部蓄積をする。(原則として、現預金)
②世のため、人のために役立つことに寄付する。(経常利益の1%の範囲内)
・・・
(来年の検討事項)
社会福祉法人向けの寄付もありますので、来年は、こちらも検討しております。
北國愛のほほえみ基金
http://www.hokkoku.co.jp/kikin/hohoemi/
家計の怒り
2011年度税制大綱が発表されました。
主な改正は、資産家や高所得者の大幅増税。。。
≪質問≫
自民党から民主党への政権交代のきっかけとなった遠因は何でしょう。
≪回答≫
家計の怒り。
1.デフレの進行
家電製品のような最終財になればなるほどデフレが進行しています。
そして、そこで働く人の給料は少なくともインフレにはなっていません。
なぜ、デフレなのでしょうか。
IT化がひとつのヒントとなります。
ITの本質は、人が代替可能ということ。
言い換えるならば、余人をもって替え難い仕事を誰でもできる仕事にするということ。
経験の浅い人でさえ、バーコードをかざすだけで、データが瞬時に読み取れる。
また、IT化は、国境をも簡単に超える。
従前、国境を越えにくい財は、人であった。
コールセンターや、簡単な入力業務は、どんどん賃金の安い海外へと流れていく。
IT化が進むにつれ、世界の誰でもできる仕事が増えれば、人の付加価値は相対的に低くなっていきます。
2.家計の期待
前回、資産家の没落で溜飲を下げていた家計の状況がここ数年一変した。
最近の10年で家計の可処分所得は減少の一途を辿る。
可処分所得とは、給与から社会保険や税金を差し引いた残り。
企業の社宅は消え、続々とフリンジベネフィットが消滅する。
徐々に家計が疲弊し、殺気だってきた。
歴史が証明するように、こういう場合は、政治家なんとかしろという空気になり、政権交代へと繋がった。
政治家は家計にカンフル剤を打とうと、子供手当など短期の政策をどんどん繰り出す。
太平洋に目薬ほどの効果しかないものの、国民は目先の誘惑に勝てない。
こういった状況が、今回の税制大綱には反映されています。
資産家の20年に関する一考察
ある会計人の会合で、寺島実郎氏の話を拝聴しました。
印象に残った話を書きとめました。
1.資産家の没落
≪質問≫
この20年、日本で一番、ダメージを受けた人は誰でしょう。
皆様は、この問いにつき、誰を連想いたしますか。
≪回答≫
資産家。
20年間、有価証券や不動産が下落し続け、資産家が没落した。
20年前の新橋駅。
1990年の頃は資産インフレの真っ只中。
都心のマンション価格は、8千万円以上の値段が付いていた。
新橋の酒場では、多くのサラリーマンが、愛する家族のため、持家を持つ喜びを語り合う一方、そのローンを一生背負うことに嘆息した。
アルコールが進み、人生の嘆き節が最高潮に近づいたとき、ある夢物語が一瞬ではあるが薄暗い酒場に光がさすのであった。
希望の光とは、資産家の御令嬢と結婚できればローンを組まなくて済むという一縷の望みであった。
ローンを組む必要がないということは、左団扇の生活を意味し、まさに夢のような物語なのだ。
不動産を所有しないサラリーマンは、資産家に対し、嘆息交じりの羨望の眼差しであった。
2.ストックからフローの時代への変遷
≪質問≫
なぜ、日本のサラリーマンは給与が下がり続ける現状を怒らないのか?
≪回答≫
資産家の存在。
現在、ストックからフローの時代へと変遷したといわれる。
100億円の資産家のストックによる利息収入とサラリーマンのフロー収入である給与を比較してみよう。
この例示でフローの時代が到来したことが簡単に説明できる。
現在、定期預金を10年預けた時の金利を、0.3%としよう。
100億円という莫大な資産を有していたとしても利息収入は、300万円。
定期預金は目減りしないが、その資産が不動産や有価証券の場合、元本もかなりの確率で毀損しただろう。
その巨額の定期預金の利子とサラリーマンの給与300万円が等価となる。
人生の幸不幸は、相対的なもの。
サラリーマンの多くは、かつて栄華を誇った資産家の没落を横目で見つつ、その資産家の不幸の残像があるため、自身の不幸を暫し、忘れることができる。
