2016/03/05
「老後破産~長寿という悪夢」<318>
「NHKスペシャル」番組で2006年に「ワーキングプア」、2013年に「認知症800万人時代~助けてと言えない認知症高齢者」、続いて2014年に「老人漂流社会~老後破産の現実」が放送された。
その「老後破産」が書籍化されたので購読してみた。
1人暮らしの高齢者が600万人に迫る中、年収が生活保護水準を下回る人はおよそ半数。
このうち生活保護を受けている人は70万人。
残る人たちの中には預貯金など十分な蓄えがある人もいるが、それを除くと、ざっと200万人余のひとり暮らしの高齢者は生活保護を受けずに年金だけでギリギリの生活を続けているが、病気になったり介護が必要になったりすると、とたんに生活は破綻してしまう。
このような境遇におかれた高齢者を「老後破産」と呼ぶことにしたという。
今、お年寄りを取り巻く環境は極めて厳しい。
少子高齢化が急速に進む中、年金・医療・介護といった社会保障給付費は、国民所得額の30%以上を占めている。
現役世代が65歳以上の高齢者を何人で支えるかをみてみると1990年は5.1人で1人の高齢者を支えていたものが、2010年には2.6人、2030年には1.7人と見込まれ、ほぼ現役世代1人で高齢者1人を支える構造き近づいている。
「自分だけ恵まれやがって」という声も若い世代から聞こえてくる。
世代間の厳しい対立だ。
憲法が保障する最低限度の水準である生活保護についても「もらい過ぎではないか」という批判や不正受給問題をことさら取り上げるマスメディアも目立つ。
そして、「そうなったのはあなたの責任でしょ」という自己責任論。
こうした高齢者を取り巻くがんじがらめの状況から「最適解」を現場から見いださねばならない。
この書は急増する老後破産の現実を指摘している。
さらに深刻なのは、今の若い世代が将来、自ら老後破産を引き継ぐ恐れがあることである。
「他人事ではない」、「今のうちに蓄えておかないと私もこうなってしまう」というもの。
国立社会保障・人口問題研究所による2035年には、高齢者の約38%が単身世帯になるといわれている。
非正規雇用など不安定な雇用が増加するなか、結婚しない若者も増えてきている。
また、子供や孫との同居率はずっと下がり続けていて現在は10%程度に過ぎない。
その先には「老後破産」が再生産されると警告している。
高齢者夫婦世帯の「老老介護」や片方が亡くなった後の生活費の確保をどうするか。
自助・共助・公助のバランスを社会構造化できるのか?
まずは自助努力から始めるしかないのが現実だ。
写真…「武蔵ケ辻」の界隈にて(3/1)
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